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メクニカお手製ペットロボット! 今なら29800円!
「……イラ様。どうされたのですかそれは」
魔壊帝国魔壊城。魔壊帝執事であるトルース・デ・タドナカは、ばったり出くわした魔壊帝国軍元帥イラ・アンリの腕の中で遊んでいる謎の物体を見て問うた。イラは謎の物体を大事そうに抱え、自慢気に答える。
「メクニカ殿に押し付けられた」
「確かに、よく見れば彼のロボットに似ていますね」
「ストレス軽減に役立つそうだ」
「……なるほど」
メクニカは国外の廃工場に住んでいるエンジニアの壊魔である。ロボットの他にも銃器全般のメンテナンスに長けており、イラの武器を修理したりするため仲が良いらしい。
イラがコートの中から普段しまっている二対目の腕を取り出したかと思うと、それぞれの腕に捕まって眠っている(?)ロボットを自慢気に見せてきた。
「三体いるぞ」
「多いですね……」
異形の顔故に表情がかなりわかりにくいイラであるが、とても喜び楽しそうにしているのが声色から分かる。常日頃は激怒し新人類への恨みを撒き散らすまさに「凶暴な怒り」という言葉が似合う彼だが、今このときばかりはそれも鳴りを潜めている。
「やらんからな」
「いやいりませんけど……」
「こんなに可愛いのに!?」
「めんどくさいことおっしゃいますねぇ!?」
不要という意思を示されたことに対してびっくりするイラ。に対してこの人こんなめんどくさい絡みしてくる人だっけと驚くトルース。必要と言っても不要と言っても絶対めんどくさい返答だったやつだこれ〜と遠い目をした。
トルースが通常業務に戻るため別れる間際、イラに腕に抱かれているのがキジコ、下の右腕に抱きついているのがワンオ、下の左腕に抱きついているのがサルサなんだ、と、意気揚々と説明される。三匹だからって安直な名前過ぎないか……? と感じたが黙っていた。怒られるの怖いし。嫌だし。
まぁ、メクニカが作ったやつなら悪いやつではないだろう。機械のような身体を持つ者同士分かりあえるなにかがあるのかもしれないし。そう思いながら彼は通常業務に戻るのだった。
「……イラ様。どうされたのですかそれは」
「それではない。ワンオとサルサとキジコだ」
「……失礼いたしました」
数日後。イラの腕の中には可愛らしく着飾ったロボットが三体いた。例のワンオとサルサとキジコである。
「その衣装は誰が作られたのです……?」
「クロシレ殿に教えてもらいながら我が作った」
「……なるほど」
すっかりロボットたちに入れ込んでいるようだ。ワンオには犬の尻尾や耳が付きオーバーオールが着せられ、キジコは羽がつきワンピースを着せられている。サルサはよくわからないがTシャツ短パンのような服を着せられていて、ほっぺの部分に赤いフェルトが付いていた。うーん、これは重症だな……
とはいえ、イラはストレスを溜めやすい性質である。ストレスを軽減し、癒やしてくれるペットがいたほうが破壊活動の支えになるだろう。楽しそうに庭園で遊ぶ彼らを見て、トルースはぼんやりと考えた。
「イラ様! すごい戦果を上げられたと聞きまし……うわっ!」
「その話はするな……!!」
イラがシャンチャレル王国の都市を一つ灰燼に帰した。それを聞いて喜び勇んで褒め称えようと会いに行ったトルースが受けたのは歓迎ではなく、斬撃であった。だからといって、トルースを害そうという意志で行われたわけではないので彼が傷つくことはない。あくまで注意を目的としたものである。
怒気を隠せていない様子のイラに困惑するトルース。この前まであんなに機嫌が良かったのに……と思っていると、イラが納刀し、ポツリポツリと語り始める。
「サルサが壊れてしまったのだ」
「……はぁ」
「我が戦地に立つときは置いていくのに、サルサはついてきて、我宛の弾丸を受けて壊れてしまったのだ」
「それは……」
イラはここ数日本当に彼らをかわいがっていた。ポテポテと歩きイラの後ろをついていき、たまに中庭で遊んでいるところも見かけた。かわいらしい生き物が少ないこの魔壊城で数少ない癒やしになっていた彼らがいなくなってしまった……というのは少しさみしいものがある。特にかわいがっていたわけではない私ですらそうなのだから、いっとうかわいがっていたイラ様の悲しみや怒りは計り知れない。デリカシーがないと称されることの多いトルースとはいえ、言葉を無くし立ち尽くすしか無かった。
「……まったく、ペットなど作るものじゃないな」
言葉とは裏腹に腕の中でロボットたちを遊ばせているイラ。やはり一匹足りない、とトルースは感じる。
「……メクニカ様に修理は頼まれたのですか?」
「頼んであるよ。一月後には返ってくる」
「そうですか……」
ならまぁ、そんな心配することでもないか。トルースは次がないと良いですね、とだけ言い残して去った。
「まったく、次は着いてくるんじゃないぞ」
『ぽぺぽ!』
『ぴぴぽぺ!』
残されたのはロボットに遊ばれているイラだけ。